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クオリティ オブ ライフ

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 暖かな小春日和。
 八王子の銀杏並木はお日様を浴びてキラキラ。道路も黄金色。
 葉が落ちてしまった木は大仕事を終えた、そんな風情も感じられるほど。

 また、別の駅前の銀杏には商工会による電飾がされています。
 確かに夜はイルミネーションの美しさはあるのですが、自然破壊にも見えます。

 今日は母の病院の付き添いでした。一応、病人ではあるのですが、本人はいたって元気なのです。
 主治医の先生からのご支持は「免疫力を高め、しっかり体力をつけて」ということなので、特に薬による治療はありません。

 喜寿を迎える母は介護施設に入ってもう3年を過ぎようとしています。諸処の事情で、いろんな介護施設を体験して、今の所に落ち着きました。
 「自立型」と言われるタイプの介護施設で、特にお世話をして頂くわけではありません。
 栄養管理された食事が毎食用意され、コーラスや絵手紙の会、季節の行事など、楽しい企画もいっぱいで、遊びをまったく知らない母は、総てが楽しい様子。
 数年前までは、年毎にひどくなっていく鬱病を患っていたのですが、今は信じられないほど安定しています。
 自宅で療養していたら‥‥、と思うと、それは暗闇でぞっとします。
 自宅の処分も終え、これで何の心配もないのだ(心配の種は自分の健康ぐらい)、と安心しきっています。
 多くの人々が「老人ホーム」といってあまり良い印象を持てないのですが、母を見ていると、「こんなに楽しそうで本当によかった」と心底ほっとしています。

 今や介護度はレベル4の認知症の父も、早くに入所したので、そこでの生活になじめ、知らぬ間に体が覚えていて、安心した生活の場になっています。
 自宅で24時間の見守りなど不可能で、昼夜逆転を防ぐために、対処療法としての睡眠薬を使ったり、一歩外に出れば道に迷ったり、と心配は尽きなかったでしょう。
 いつぞやは、私の地方出張中、父が帰ってこない、と母から電話がかかってきたときには、私も「警察に連絡を」としか言いようがありませんでした。
 その時は父はまだ車を運転していて、ご本人、帰ってきたらどこに行ったか覚えていなかったのでした。

 今はプロの介護スタッフの方々のお陰で、安定した生活ができているのだ、と感謝しています。
 逆に言えば、社会生活は送れない状態の父ですが、人としての尊厳もあり、自負もあるのです。
 その人格を尊重して見守って頂けるというのは、家族ではできることではないでしょう。

 よく「家での介護が一番」と言われるのですが、私はまったくそうは思っていないのです。
 両親を見ていて実感します。また、他の方々の例を伺ってもそうです。
 「家がいい」というのは、言い換えると、年を取ったときには「変化」が何より億劫だ、ということにもなります。
 実際には、スタッフにとても良くしてもらうので(他人だからこそできます)、「いいこと」がいっぱいあるんです。 
 病気にもよりますし、家族状況もあるのですから、ベストアンサーはその家庭によるでしょう。
 それに、介護施設もケアスタッフもピンからキリまでですから、絶対に介護施設がいい、とは言い切れません。
 スウェーデンでは福祉の一環として、100%高齢の方は別居。一緒に住みたくてもダメだとか。
 
 私も何人かの認知症の方々とのおつきあいがありますが、皆さん、忘れてしまうことへの不安を抱えておられるのだ、とよくわかります。
 どうやって一生を閉じるのか、不安を持たずに、安心して暮らしていく、私はそこに重点をおいた選択をしました。
 どうやって暮らすか、どんな風に死を迎えるか。
 残りの生を時間ではなく、質で計れる様にしたい、そんなことを考えるようになりました。
by artemis-journal | 2008-12-05 00:20 | 生活
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